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column 京都「人生がラク」になるイイ話

「評価されていない」と嘆くなら、
京都を目指せ

報われない…このままだと自分がダメになる

 自分は頑張ったつもりでも、会社や上司に評価してもらえない。そんな悩みを抱える人は少なくないでしょう。

1.会社は成果主義なので、頑張ったプロセスは評価されない。
2.ようやく出した成果を、上司や同僚に横取りされた。
3.ダメな部下のミスを、自分の責任にされた。このままでは評価は落ちるばかり。
4.自分は頑張っているのに、ダメ上司がいる限り評価されない。
5.絶対自信があったプランを、上司に勝手に揉み消された。

 このような悩みを上げればキリがないと思いますが、問題なのは、このような悩みが生む「報われない」「悔しい」「このままだと自分はダメになる」といった心の葛藤を放っておくこと。いずれ、心が壊れてしまうことも否めません。

 そんな時こそ、京都の「人生がラク」になるイイ話が役に立ちます。

 どうも自分は報われないな…とお嘆きのあなたに、京都府宇治市にある世界文化遺産「宇治上神社」の知られざるエピソードと、そこから聞こえる応援メッセージをご紹介しましょう。

昔と全く変わらない宇治上神社の拝殿

華やかな「平等院」との知られざる関係

 数十年ぶりに訪れた宇治上神社は、相変わらず鬱蒼(うっそう)とした森の中にありました。宇治にはもう一つの世界遺産「平等院」があり(というより、こちらの方が有名ですが)、宇治上神社とは宇治川を挟んで向かい合うように建っています。このふたつの世界遺産は歩いて行ける距離にあることから、最近では世界遺産ルートとして定着している様子でした。

 しかし昔を知る私には、二つの社寺の印象はあまり変わっていないように見えました。平等院の周囲にはにぎやかな門前町があるのに対し、宇治上神社の参道は昔のままひっそりとのびているだけです。ただ一つだけ、鳥居の横の「世界文化遺産 宇治上神社」と書かれた大きな石碑が「もう、妖怪神社じゃないよ」とささやいているようでした。

真新しい「世界文化遺産 宇治上神社」の石碑

 事前に入手した資料によると宇治上神社では2014年、本殿と拝殿の修理が行われていたようです。2014年といえば平等院も「平成の大修理」が完了し、全国的な注目を集めていました。修復後の平等院は、藤原頼道が「西方極楽浄土の出現」を目指したというエピソードを裏付けるように、きらびやかな姿に生まれ変わりました。その様子はテレビや新聞で連日のように報道されたので、覚えている方も多いでしょう。

 一方、宇治上神社の修理については、平等院ほど大きなニュースにはなりませんでした。 見た目にもそれほど変わった様子はなく、昔と変わらない雰囲気に包まれていました。

 このように一見、平等院と宇治上神社は対照的に見えることが多く、見方によっては「陰と陽」の関係であるようにも見えます。宇治上神社は、華やかな平等院の陰に隠れた存在と思ってしまうことも少なくありません。

 ところが、宇治上神社と平等院は、対立どころか心温まる関係にあったのです。

 宇治上神社の境内には、本殿に寄り添うように建つ「春日社」(国指定重要文化財)があります。その「春日社」には、平等院をつくった藤原氏の守護神がまつられているのです。宇治上神社の創建については明確な資料がないためハッキリとはわかりませんが、927年にまとめられた『延喜式神名帳』に宇治上神社を指す記述が見られることや平等院の創建が998年であることを併せて考えると、平等院が創建されたときには、すでに宇治上神社は存在していたことになります。

藤原氏の守護神を祀る「春日社」

 その境内に藤原氏の守護神が祀られているということは、宇治川を挟んで向かい合う場所から「平等院を見守って欲しい」と願っていたのではないでしょうか。

 そもそも現在、平等院が建っている場所には、源氏物語の主人公・光源氏のモデルとされる嵯峨源氏の源融(みなもとのとおる)が営んだ別荘があったと伝えられています。別荘を地域の氏神様に見守って欲しいと思うことは、十分に考えられます。もしかしたら、その時から「宇治上神社と向かい合った場所」は貴重だったのかもしれません。

 どちらにしても、宇治上神社は平等院の陰に隠れるどころか、見守っている大きな存在であることは間違いなさそうです。

 それだけではありません。宇治の名産「宇治茶」を陰で支えていたのも宇治上神社だったのです。境内に「桐原水」と呼ばれる湧水があり、今では唯一現存する「宇治七名水」として知られています。この水が昔から宇治茶を淹れるために使われていたというのです。
 つまり、「宇治茶はおいしい」と言われる名声は、「桐原水」が支えていたことになります。 どんなに立派なお茶も、水との相性が良くなければ「美味しいお茶」にならないのですから。

価値観は変わる。何事にも「良い側面」はある。

 幼少期、妖怪神社と思っていた宇治上神社が、実は想像を超えた大きな存在だったことを目の当たりにして、私は改めて高度経済成長期の価値観を振り返ってみました。すぐに思い当たることだけ羅列しても、今の価値観とは全く違うことがわかります。

・大量生産大量消費 ⇒ 節約志向
・公務員は不人気職業 ⇒ 公務員は大人気職業
・終身雇用で会社に依存 ⇒ 転職が当たり前
・日記は人に見せないもの ⇒ 日記はブログで公開するもの

 ほかにも、価値観の大きな変化を見せた事象を挙げればキリがありません。そうです。価値観は変わるのです。だから、あなたが日々の仕事に真摯な姿勢で取り組んでいるのであれば、今の周囲の価値観で悩む必要も、慌てる必要もありません。宇治上神社のようにどっしりと動じずにいれば、いずれ周りの価値観が変わり、あなたの本当の価値観が理解されるようになるでしょう。

 最後に、宇治上神社の社務所に置かれていたメッセージを紹介しましょう。

あなたは『幸運な人』? それとも『残念な人』?

 一つの物事や事象も「見る方向」によって全く違った見方が出来ます。その「あらゆる方面から見る」癖をつけることによって、あなたの身の上に起こる事を「幸運」に変えていけば、「幸運な人」になれると思いませんか?

 どうです、宇治上神社の応援メッセージ、心に響きましたか?これからも、「報われない」「悔しい」「このままだと自分がダメになる」と思ったら、思い出してください。きっと「人生がラク」になると思いますよ。

(nikkei BP net 2015.9.14掲載)